古着大百科 > タグの見分け方

アメリカンクラシックの代表格として、古着屋で根強い人気を誇るL.L.Bean(エルエルビーン)。バーズアイニットのセーターやトートバッグ、フィールドコートなど、時代を超えて愛される定番アイテムを数多く生み出してきたブランドだ。ヴィンテージ市場では、襟元や裾に付くタグの書体や色使いを読み解くことで、そのアイテムがおおよそどの年代に作られたのかを推測できることが知られている。この記事では、L.L.Beanのタグに現れる年代のサインを、古着初心者の方にもわかりやすいように整理して紹介していく。100年を超える歴史を持つブランドだからこそ、タグの変遷を追うだけでもちょっとした年代記のような面白さがある。派手さのないクラシックなデザインの奥に、これだけ緻密な変化が隠れているというギャップも、このブランドの魅力のひとつだろう。
L.L.Beanは1912年、アメリカのメイン州フリーポートでレオン・レオンウッド・ビーン氏によって設立された。創業のきっかけは、狩猟中に足が濡れてしまうことに悩んだビーン氏自身が、ゴム底に革のアッパーを縫い付けた防水性のブーツを考案したことにある。この「メイン・ハンティング・シューズ」は評判を呼んだが、最初に販売した100足のうち大半にゴムと革の縫い付け部分の不良が見つかり、ビーン氏は購入者全員に返金するという対応を取った。この誠実な姿勢がその後の信頼につながり、長年にわたる手厚い保証制度の礎になったと言われている。以来、ブーツだけでなくウェアやアウトドア用品にも展開を広げ、通信販売を軸に全米で親しまれるブランドへと成長していった。創業者の死後は孫にあたる人物が経営を引き継ぎ、代替わりのタイミングでタグのデザインにも変化が生じたと考えられている。家族経営から始まった信頼の連鎖が、今日まで続くブランドの土台を築いてきたと言えるだろう。
L.L.Beanを語るうえで欠かせないのが、創業当初から続く手厚い返品・保証の姿勢だ。最初のブーツの不良対応をきっかけに芽生えたこの姿勢は、長年にわたって「無期限保証」として知られるようになり、多くの顧客からの信頼を集める土台になった。この方針は時代とともに条件が見直されてきた経緯もあるが、ブランドの根幹にある「良いものを長く使ってもらう」という考え方は一貫している。修理を受け付ける窓口や交換対応の仕組みも、時代に合わせて少しずつ形を変えながら今日まで続いている。タグのデザインが時代ごとに変化していく一方で、こうした企業姿勢そのものは変わらず受け継がれてきた点も、このブランドを知るうえで面白いポイントだ。

L.L.Beanのタグに書かれたブランド名の書体は、年代を見分ける最初の手がかりになる。もっとも古い時代は筆記体で優雅に描かれたタイプが使われていたが、ある時期を境に、活字のようにきっちりとしたブロック体の表記へと切り替わっていった。まずはこの筆記体かブロック体かという違いを見極めることが、年代判別の入り口になる。文字の丸みや線の太さにも時代ごとの傾向があり、見比べる目を養うほど細かな違いに気づけるようになる。
タグの地色にも時代ごとの特徴がある。もっとも古い時代は黒地に金色や赤色の文字が入ったタイプが使われていたが、その後の時代には白地に緑色の文字を配したタイプへと変わっていった。地色の違いはひと目で判断しやすいポイントであるため、まずはこの色分けを覚えておくだけでも役立つ。慣れれば遠目からでも大まかな年代帯の見当がつくようになる。

ロゴの近くに添えられる商標マークの種類も重要な手がかりだ。ある時期からは商標登録を出願中であることを示すマークが使われるようになり、その後の時代になると正式に登録が完了したことを示す別の種類のマークへと切り替わっていった。このマークの種類を確認することで、大まかな時代帯をさらに絞り込むことができる。マークの記号自体は小さいが、拡大して確認すれば見分けは難しくない。
タグの下部に記載される所在地の表記も、年代を見分ける材料になる。もっとも古い時代は州名が省略された短い表記が使われていたが、その後の時代になると州名を省略せずに書き記す表記へと変わっていった。同じような地色や書体のタグでも、この所在地表記の書き方まで確認することで、より詳しい時期の絞り込みができる。ごく短い単語ひとつの違いに見えるが、この表記が切り替わったタイミングは、書体の変化とほぼ重なっているとされ、両者をあわせて確認すると精度がさらに高まる。

タグの最下部やタグとは別に付けられた小タグに記載される生産国表記の有無も見逃せないポイントだ。この表記が加わるようになった時期以降のものは、比較的新しい年代のものと判断する材料になる。生産国が国内に限られていた時期から、複数の国へと生産が広がっていった時期まで、この表記の変化を追いかけることでさらに詳しい時期を絞り込むことができる。国内生産のみだった時期のアイテムは、縫製の均一さや生地の厚みに独特の安定感があるとも言われ、生産国表記そのものが品質面での目安として語られることも多い。
L.L.Beanのタグの中には、通常の筆記体やブロック体とは異なる、ごく短期間だけ使われた特殊なデザインのものも存在する。黒地に円形のマークをあしらったタイプなどがその代表例で、特定の周年記念にあわせて製作されたのではないかとも言われている。こうしたタグは古着屋でもなかなか出会える機会が少なく、見つけた際には非常に希少なものである可能性が高い。通常の年代表とは別に、こうした特殊なタグの存在も頭に入れておくと、思わぬ掘り出し物に気づけるかもしれない。

| 時期の目安 | タグの通称 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 1950年代 | 筆記体黒タグ | 黒地に金色または赤色の筆記体ロゴ。所在地は省略された短い表記 |
| 1960年代 | 筆記体白タグ前期 | 地色が白に変わる。商標マークが加わり始める時期 |
| 1970年代 | 筆記体白タグ後期 | 筆記体の文字がやや太くなる。所在地表記が変化する個体も見られる |
| 1970年代中期〜80年代前半 | ブロック体タグ前期 | 書体が筆記体からブロック体へ移行。白地に緑文字が定着 |
| 1980年代 | ブロック体タグ後期 | 商標マークの種類が変化。所在地表記も省略の無い形に統一 |
| 1980年代後半〜1990年代 | 現行系タグ前期 | 生産国表記が加わる。書体がややシャープな印象に変化 |
| 1990年代以降 | 現行系タグ | 生産国が多様化し、別タグでの表記が一般的に |

実物を確認する際は、まずタグの書体が筆記体かブロック体かを見て大まかな時代帯を絞り込む。次にタグの地色を確認し、続いて商標マークの種類を見る。そのうえで所在地表記の書き方を確認し、最後に生産国表記の有無を見て、これまでの情報と矛盾がないかを突き合わせるという順序で進めると判断がしやすい。

タグの情報だけでなく、生地そのものの質感も年代を見分ける補助的な手がかりになる。ニット製品であれば、襟元や袖口のリブが強く効いているものや、編み地が重く密なものは比較的古い時代の傾向があるとされる。逆に、洗濯表示の記載が長く詳細なものは、比較的近年の製品である可能性が高い。タグ単体で判断がつきにくい場合は、こうした生地の質感もあわせて確認するとよい。ボタンの素材や刻印、裏地の縫い付け方といった細部にも年代ごとの傾向が見られることがあり、慣れてくるとタグを見る前に生地の手触りだけである程度の見当がつくようになる。長年愛用されてきた個体ならではの色落ちや風合いの変化も、その一着が歩んできた時間の長さを物語る手がかりのひとつだ。

オンラインで購入を検討する場合は、タグの正面写真だけでなく、所在地表記や商標マーク部分を接写した写真もあわせて依頼するのがおすすめだ。これらの表記は文字が小さく、写真の解像度が低いと判読しづらいことが多いため、できるだけ近接して撮影してもらうとよい。実店舗で確認する場合も、タグを裏返して生産国表記の有無まで確認する習慣をつけておくと、判断材料が格段に増える。あわせて、縫い糸の色がタグ周辺だけ違っていないかも確認しておきたい。まれにタグが後年に付け替えられている個体も存在するため、こうした違和感には注意が必要だ。とくに人気の高い年代のタグだけを別の個体に移し替えるといったケースも指摘されており、タグ単体の見た目の良さだけで飛びつかず、周辺の縫製や生地の状態とあわせて総合的に判断する慎重さが求められる。

A. 黒地のタグのほうが先に使われており、その後の時代に白地のタグへと切り替わっている。
A. 1970年代の中頃を境に、徐々にブロック体へと移行していったとされている。移行期にはしばらく両方の書体が併存していた可能性もある。
A. その可能性は高いが、断定はできない。生産国表記が加わる前の時代であれば、正規品であってもこの表記自体が存在しない。他の着眼点とあわせて確認するのが望ましい。
A. まれにではあるが、修理やリメイクの過程でタグが移植されている個体も存在するとされる。縫い糸の色が周辺と異なる場合は、こうした可能性も考慮したほうがよい。
ヴィンテージ市場でL.L.Beanのアイテムに価格差が生まれるのは、単に古いか新しいかという単純な話だけではない。もっとも古い時代の筆記体タグが付いた個体は現存数自体が少なく、状態の良いものはひときわ高い評価を受ける傾向にある。あわせて、当時の生地の質感や編み立ての密度、縫製の丁寧さといった要素が組み合わさることで、コレクターの間での評価が変わってくる。タグから読み取れる情報は、単なる「年式」以上に、その一着がどのような時代の暮らしの中で使われていたのかを知る手がかりでもある。派手な流行を追わず、長く使えるものを作り続けてきたブランドだからこそ、数十年前のアイテムでも今なお違和感なく着られるという特別な魅力がある。値段の高低だけでなく、そうした「変わらなさ」に価値を見出すのも、ヴィンテージを楽しむ醍醐味のひとつだろう。

L.L.Beanのタグから年代を読み解くには、タグの書体、地色、商標マークの種類、所在地表記の書き方、生産国表記の有無という複数の要素を組み合わせて確認していくことが欠かせない。100年を超える歴史の中で、返品対応の誠実さから始まった信頼の物語が、そのままタグの変遷にも刻まれている。ひとつずつ着眼点を確認しながら、自分の手元にある一着の背景を紐解いていってほしい。派手さはないが、知れば知るほど奥深い魅力に気づかされるブランドであり、タグを読み解く作業そのものが、ちょっとした歴史探訪のような楽しさを与えてくれるはずだ。
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