古着辞典 > タグの見分け方

スニーカーだけでなく、Tシャツやナイロンジャケットといったウェア類でも根強い人気を誇るNIKE(ナイキ)。ヴィンテージ市場では、襟元や裾のタグを見ることで、そのアイテムがどのあたりの年代に作られたのかをある程度推測できることが知られている。歴史自体はさほど長いブランドではないものの、社名の成り立ちやロゴの誕生の経緯まで含めて追いかけていくと、タグひとつひとつに時代の背景が刻まれていることがわかる。この記事では、NIKEのタグに現れる年代のサインを、古着初心者の方にもわかりやすいように整理して紹介していく。スニーカーの世界的な知名度に比べると、ウェアの年代判別はまだあまり知られていない分野でもあり、知っておくだけで古着屋での目利きの幅がぐっと広がるはずだ。
NIKEの前身は、1964年に設立された「ブルーリボンスポーツ(BRS)」という会社である。設立当初は日本のシューズメーカーのランニングシューズをアメリカ国内で輸入販売する事業からスタートしており、自社ブランドのシューズを作っていたわけではなかった。その後、契約関係の終了を機に自社ブランドの展開へと舵を切り、1971年に社名を「NIKE」へと改め、あわせて現在も象徴として使われている「スウッシュ」のロゴが誕生した。このロゴは、当時大学でグラフィックデザインを学んでいた学生が手がけたものとして知られている。こうした成り立ちの若さゆえに、NIKEのヴィンテージタグは他の老舗ブランドに比べると種類自体は少なめだが、その分ひとつひとつの変化がはっきりしているのが特徴だ。

創業まもない時期のNIKEは、シューズの輸入販売から始まった会社だったこともあり、アパレル製品を一から自社で作る体制がまだ整っていなかった。そのため、当時すでにスウェットやTシャツの生産実績があった老舗メーカーにボディの製造を委託し、そこにNIKEのロゴを付けて販売するという方法が取られていた。このような経緯があるため、初期のアイテムを手に取ると、タグの表側はNIKEのロゴであるにもかかわらず、裏側には委託先メーカーの登録番号がそのまま残っているという少し不思議な組み合わせに出会うことがある。この事実を知っておくと、初期のNIKEアイテムがなぜ他ブランドの雰囲気を帯びているのか、その理由に納得がいくはずだ。当時のカタログやアーカイブを追いかけるコレクターの間では、どの委託先のボディが使われていたかまで含めて話題になることがあり、単なるロゴの違い以上に奥の深いテーマとして扱われている。
NIKEの象徴であるスウッシュのロゴは、社名変更にあわせて新たに制作されたものである。当時グラフィックデザインを学んでいた学生が手がけたこのロゴは、勝利の女神の翼をイメージしたものとされ、シンプルながらも躍動感のある曲線が特徴だ。誕生当初のロゴが複数のスウッシュを組み合わせたような放射状の意匠で使われていた時期があることも興味深いポイントで、現在よく知られる単体のスウッシュの形に落ち着くまでには、いくつかの意匠上の試行錯誤があったことがうかがえる。当時のデザイン部門が限られた人数で試行錯誤を重ねていたことを思うと、シンプルな一本の曲線に行き着くまでの過程そのものにも、ブランドの初期衝動のようなものが感じられる。こうした背景を知っておくと、初期のタグに描かれた意匠の違いも、ただのデザイン差ではなく歴史の一部として楽しめるようになる。

NIKEのウェアに付くタグは、時代によって地色とロゴの色使いがはっきりと変わっている。ごく初期は黒い地色に赤系のマークが入ったタイプ、続いてオレンジ系の配色、その後は紺色や銀色を基調にした配色へと移り変わっていった。まずはこの地色の分類がどの時代帯に当てはまるかを大まかに把握することが、年代判別の入り口になる。同じ地色の系統であっても、縫い付けの糸の色やタグの縁の処理に細かな違いが見られることがあり、こうした細部まで見比べる習慣をつけておくと、より具体的な時期の絞り込みにつながる。
ブランド名の書体も重要な手がかりだ。ごく初期には筆記体でロゴが描かれたタイプが使われていたが、その後、現在おなじみの大文字ブロック体へと切り替わっている。筆記体のタイプは全体的に流通量が少なく、市場でも希少性が高いとされている。

ロゴの近くに付く小さな登録マークにも注目したい。ある時期は商標登録済みを示すマークが使われ、別の時期にはこれとは違う種類のマークに切り替わっている。マークの種類だけでなく、ロゴのどの位置に添えられているかも時代によって異なるため、あわせて確認するとより精度の高い判断ができる。
創業から間もない時期は自社工場を持たず、他のアパレルメーカーに生産を委託していたことが知られている。そのため、タグの裏側を確認すると、委託先の会社の登録番号がそのまま記載されている個体が存在する。表側のロゴだけでなく、タグの裏側の表記まで確認することで、より詳しい年代の裏付けが取れることがある。

生産国の表記も年代を絞り込むための材料になる。時代が進むにつれて生産拠点は複数の国へと広がっていったため、タグに記載された生産国と、その他の意匠の組み合わせを見比べることで、大まかな時期をより具体的に絞り込むことができる。

| 時期の目安 | タグの通称 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 1970年代初期〜中期 | 黒地の初期タグ | 黒い地色に赤系のマークが目立つデザイン。他社ボディへの委託生産が中心 |
| 1970年代初期〜中期 | 筆記体タグ | ブランド名が筆記体で描かれたタイプ。同時期に複数デザインが併存していた |
| 1970年代後期〜1980年代前半 | オレンジ系タグ | ブロック体表記へ移行。登録マークの種類が段階的に変化する |
| 1980年代前半〜中頃 | 紺色系タグ | 白い刺繍でロゴを表現。サイズ表記が別カラーで添えられる |
| 1980年代後半〜1990年代 | 銀色系タグ | プリントと刺繍の両タイプが存在。生産国の幅が広がる時期 |
| 2000年代以降 | 現行系タグ | 製造期間の表記や独自素材の記載など情報量が増加 |

実物を確認する際は、まずタグの地色とロゴの色を見て大まかな時代帯を絞り込む。次に書体が筆記体かブロック体かを確認し、続いて登録マークの種類と位置をチェックする。そのうえでタグの裏側に委託生産の痕跡がないかを見て、最後に生産国の表記を確認するという順序で進めると、判断に矛盾が出にくい。
タグのデザインだけでなく、生地の素材感やボディそのものの作りにも時代ごとの特徴が表れる。初期の時代は他社のボディをそのまま使っていたことが多いため、タグのブランドと本体の縫製の癖が一致しないように見える個体もある。この場合は、タグの情報を軸にしつつも、全体の素材感や縫製の質感を含めて総合的に判断することが大切だ。委託先によってボディの型紙や生地の目付けにも個性があるため、慣れてくるとタグを見なくても製造元の傾向がなんとなくつかめるようになることもある。

人気の高いデザインについては、後年に改めて再現された復刻モデルも数多く展開されている。タグのデザインだけを見ると本物のヴィンテージと似ている場合があるため、生産国の表記や品質表示タグの内容、生地の質感まで含めて確認することが欠かせない。とくに古い時代のデザインでありながら現代的な生産国表記が入っている場合は、復刻品である可能性を疑うべきだろう。生地の裁断パターンや縫製ラインの本数など、写真だけでは判断しづらい細部まで確認できると理想的だ。

A. 黒地に赤系のマークが入った最初期のタイプと、同時期に使われていた筆記体タイプが、現存する中でも特に古い部類にあたるとされる。どちらも流通量が少なく、希少性が高い。
A. 創業初期は自社での生産体制が整っておらず、他のアパレルメーカーに製造を委託していたためだ。タグの裏側にその委託先の登録番号がそのまま残っている個体が見られる。
A. 筆記体のほうが先に使われており、その後の時代にブロック体へと切り替わっている。
A. 生産国の移行はおおまかな目安にはなるが、それだけで断定するのは避けたほうがよい。タグの地色やロゴの書体、登録マークの種類とあわせて確認することで、より精度の高い判断につながる。
オンラインで購入を検討する場合は、タグの正面写真だけでなく、タグの裏側までめくった写真を追加で依頼するのがおすすめだ。委託生産の痕跡や品質表示の内容は裏面に記載されていることが多く、正面のロゴだけでは判断材料が不足しがちになる。実店舗で確認する場合も同様に、タグを裏返して確認する習慣をつけておくと、判断の精度が大きく上がる。あわせて、生地の厚みや刺繍の縫い目の質感、経年による色あせ方といった全体の風合いも、タグの情報と組み合わせて見ることで、より確からしい年代推測につながる。
ヴィンテージ市場でNIKEのウェアに価格差が生まれるのは、単に古いか新しいかという単純な話だけではない。特定の時代にしか存在しないタグのデザインや、他ブランドのボディを使った個体ならではの組み合わせの妙、当時の縫製や生地の質感といった要素が重なり合うことで、コレクターの間で評価が高まりやすくなっている。とりわけ初期の希少なタグが付いた個体は現存数自体が少なく、状態の良いものはひときわ高い評価を受ける傾向にある。タグから読み取れる情報は、単なる「年式」以上に、その一着がどのような時代の空気の中で作られたのかを知る手がかりでもあるのだ。値段の高低だけでなく、その背景にある物語まで含めて味わうことが、ヴィンテージ選びの醍醐味と言えるだろう。

NIKEのウェアの年代を読み解くには、タグの地色とロゴの色、書体の違い、登録マークの種類と位置、委託生産の痕跡、生産国の表記という複数の要素を組み合わせて確認していくことが欠かせない。歴史自体は比較的新しいブランドではあるが、その分だけ変化の過程がはっきりしており、知識を積み重ねるほど一着一着の背景が見えてくるようになる。タグに残された小さな手がかりを読み解く作業そのものも、ヴィンテージ古着ならではの楽しみのひとつと言えるだろう。焦らず一つずつ着眼点を確認していけば、店頭で一着を手に取った瞬間にもある程度の時代の見当がつけられるようになっていくはずだ。
この記事で調べたものが、いまお店にあるかを見られます。売り切れの場合は出ません。
いまお店に在庫がありません—