古着大百科 > タグの見分け方

今日のスウェットシャツの原型を生み出したブランドとして知られるRussell Athletic(ラッセルアスレチック)。カレッジスウェットの定番として、古着市場でも根強い人気を誇っている。それだけに、その歴史的な価値を知る人ほど、タグの違いに強いこだわりを持つ傾向がある。ヴィンテージ市場では、首元のタグに描かれたイーグルロゴの形や色使いを読み解くことで、そのアイテムがおおよそどの年代に作られたのかを推測できることが知られている。この記事では、Russell Athleticのタグに現れる年代のサインを、古着初心者の方にもわかりやすいように整理して紹介していく。社名やブランド名の変遷が複雑なブランドだけに、その歴史を知ることでタグの理解もぐっと深まる。ひとつのブランドの中に、これだけ多くの企業の歩みが重なっているというのも、なかなか珍しい特徴と言えるだろう。
Russell Athleticは1902年、アメリカのアラバマ州で創業者ベンジャミン・ラッセル氏によって設立された。創業当初は下着やベストといったアイテムを手がける会社としてスタートしていた。転機となったのは1920年代のことで、創業者の息子が、当時主流だったウール素材の練習着が汗によって肌をこすり、着心地の悪さや擦り傷を引き起こしていることに気づき、コットン素材への切り替えを提案した。この提案がすぐに採用され、学生やスポーツ選手たちから広く受け入れられていったことが、今日私たちが親しんでいるスウェットシャツの原型になったとされている。単なる思いつきではなく、実際に着用する若者の声に真摯に耳を傾けた結果生まれたこの改良は、後年になっても色あせることのない普遍的な発明だったと言えるだろう。快適さを追求するというシンプルな発想が、100年以上経った今もなお世界中で愛用されるアイテムを生み出したという事実は、あらためて振り返ると感慨深いものがある。
Russell Athleticというブランド名にたどり着くまでには、いくつもの社名変更を経てきたという複雑な歴史がある。1932年にアスレチックウェアのラインを立ち上げた際の社名は「サザン・マニュファクチャリング・カンパニー」という名称だった。その後「ラッセル・サザン・カンパニー」、「ラッセル・ミルズ・インク」と社名が変わり、1972年になってようやく「ラッセル・アスレチック」というブランド名に切り替わっている。翌1973年には、社名自体も「ラッセル・コーポレーション」へと変更された。こうした社名の変遷はそのままタグの表記にも反映されているため、この歴史の流れを頭に入れておくことが、年代判別の大きな助けになる。ひとつの企業がこれほど何度も名前を変えながら成長を続けてきたという事例は珍しく、当時の企業合併や事業拡大の動きが、そのままタグという小さな記録に刻み込まれている点も興味深い。

タグに記載されている社名は、前述の社名変遷とそのまま連動している。もっとも古い時代は前身にあたる社名がそのまま刺繍されたタグが使われていたが、その後の社名変更のたびに、タグに記載される表記も少しずつ変わっていった。この社名表記を確認することが、年代判別の出発点になる。長い社名がそのまま刺繍されている個体ほど、その分だけ手間のかかった時代の製品であるとも言え、当時の丁寧な作りを感じさせるポイントだ。読み解く楽しさもひとしおと言えるだろう。
ブランドの象徴である白頭鷲(イーグル)のロゴにも時代ごとの変化がある。ロゴが導入される前の時代にはイーグル自体が存在せず、その後イーグルの文字を四角い枠で囲んだデザインが登場し、さらに時代が進むと枠が外れたデザインへと変化していった。イーグルロゴの有無と、それを囲む枠があるかどうかを確認することで、大まかな時代帯を絞り込むことができる。白頭鷲は進化や力強さ、統合を象徴する存在として選ばれたモチーフとされ、単なる装飾ではなくブランドの理念を体現したデザインとして今日まで受け継がれている。

Russell Athleticのタグの中でも特に有名なのが、光沢のある金色地に赤いロゴを配した通称「金タグ」だ。この金タグの時代の後には、青を基調にしたタグへと切り替わっていった。地色の違いはひと目で判断しやすいポイントであるため、まずはこの色分けを覚えておくだけでも役立つ。金タグはその独特な光沢感から遠目でも見分けやすく、初心者が最初に覚える着眼点としてもおすすめだ。
タグやロゴの表現方法にも時代ごとの違いが見られる。ある時期まではプリントによる表現が主流だったが、時代が進むにつれて刺繍による表現へと切り替わっていった。とくに1990年代以降のタグは刺繍仕様のものが多く見られるようになる。この表現方法の違いも、年代を絞り込むための補助的な手がかりになる。プリントタグは経年で色が薄れやすい一方、刺繍タグは糸自体の色が長く保たれる傾向があり、この耐久性の違いからも当時の技術の変遷を感じ取ることができる。

タグに記載されている生地の素材配合比率も見逃せないポイントだ。かつては綿の比率が高い配合だったが、時代が進むにつれてポリエステルの比率が増えていく傾向が見られる。同じ金タグの時代でも、この配合比率の違いによって前期のものか後期のものかをさらに絞り込むことができる。生地の手触りにも比率の違いが如実に表れるため、慣れてくると数字を見なくても、触った瞬間におおよその時代の見当がつけられるようになる。

| 時期の目安 | タグの通称 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 1930年代〜1950年代 | 黒タグ(サザン期) | 前身の社名が筆記体で刺繍される。黒地に白文字の希少なタグ |
| 1940年代(戦時中) | 官給品タグ | ブランドロゴが外され、製造社番号のみが記載される特殊なタイプ |
| 1950年代〜1960年代前半 | 過渡期のタグ | 社名変更にあわせて表記が段階的に変化していく時期 |
| 1962年〜1972年 | イーグル枠タグ | イーグルロゴが枠で囲われる。社名は当時のものが記載される |
| 1974年〜1970年代後半 | 金タグ初期 | 光沢のある金地に赤ロゴ。ごく短期間のみの希少なタイプも存在 |
| 1970年代後半〜1984年頃 | 金タグ後期 | 四角い枠が外れる。生地の配合比率が変化していく時期 |
| 1980年代〜1990年代前半 | 青タグ(プリント) | 地色が青に変化。ロゴはまだプリント表現が中心 |
| 1990年代以降 | 青タグ(刺繍) | ロゴが刺繍表現へ移行。生産国も多様化していく |

実物を確認する際は、まずタグに記載された社名を見て大まかな時代帯を絞り込む。この最初のステップさえ押さえておけば、その後の判別作業もぐっとスムーズに進む。次にイーグルロゴの有無と枠の形を確認し、続いてタグの地色が金か青かを見る。そのうえで刺繍かプリントかを確認し、最後に生地の素材配合比率を見て、これまでの情報と矛盾がないかを突き合わせるという順序で進めると判断がしやすい。

第二次世界大戦中、Russell Athleticは軍への訓練用ウェアの支給を行っていた実績を持つ。こうした官給品には通常のブランドロゴが入っておらず、代わりに製造社を示す番号だけが記載されているという特殊な特徴がある。この番号さえ確認できれば、ブランド名の記載が無い個体でもRussell社の製品であると判断することができる。番号自体は小さく目立たないが、覚えておくと非常に役立つ知識だ。この事実はあまり知られていないため、掘り出し物に出会える可能性を秘めたポイントでもある。ロゴが無いというだけで見過ごされがちなアイテムだからこそ、この製造社番号の存在を知っているかどうかで、思わぬ発見につながることがある。当時の軍需品ならではの無骨な作りと、通常のブランド品には無い簡素さも、こうした官給品ならではの魅力のひとつと言えるだろう。歴史的な資料としての価値も見逃せない。

オンラインで購入を検討する場合は、タグ全体の写真だけでなく、社名部分を接写した写真もあわせて依頼するのがおすすめだ。社名の文字は小さく、写真の解像度が低いと判読しづらいことが多いため、できるだけ近接して撮影してもらうとよい。実店舗で確認する場合も、タグの裏側にある素材配合比率まで確認する習慣をつけておくと、判断材料が格段に増える。あわせて、生地の厚みや起毛の密度、袖口や裾のリブの伸縮性といった全体の質感も見ておくと、タグの情報だけに頼らない総合的な判断ができるようになる。とくに金タグ時代の生地は厚手でドライな質感が特徴とされ、現行品と触り比べてみると違いを実感しやすい。

A. 光沢のある独特の色合いと、当時の厚手でドライな生地感が高く評価されているためだ。長年着用されても着崩れしにくい丈夫さも魅力とされている。
A. そうとは限らない。戦時中の官給品には意図的にロゴが外されていることがあり、その場合は製造社番号の記載で判断することになる。
A. 金タグのほうが先に使われており、その後の時代に青タグへと切り替わっている。
A. 大まかな目安にはなるが、それだけで断定するのは避けたほうがよい。タグの社名表記やイーグルロゴの形とあわせて確認することが大切だ。
ヴィンテージ市場でRussell Athleticのアイテムに価格差が生まれるのは、単に古いか新しいかという単純な話だけではない。使用期間が短かった希少なタグデザインや、当時の生地の質感、厚みといった要素が組み合わさることで、コレクターの間での評価が変わってくる。スウェットシャツという今や当たり前の存在の原型を作ったブランドだからこそ、タグから読み取れる情報は単なる「年式」以上に、その一着がどのような時代の技術背景の中で作られたのかを知る手がかりでもある。着心地の悪さを改善したいという一人の若者の発想から、今日まで受け継がれる定番アイテムが生まれたという物語を知っておくと、一枚のタグから読み取れる背景もより深く感じられるようになる。

Russell Athleticのタグから年代を読み解くには、タグに記載された社名、イーグルロゴの有無と枠の形、タグの地色、刺繍かプリントか、生地の素材配合比率という複数の要素を組み合わせて確認していくことが欠かせない。幾度もの社名変更を経てきたブランドだからこそ、タグの変遷そのものにも企業としての歩みが色濃く刻まれている。ひとつずつ着眼点を確認しながら、自分の手元にある一着の背景を紐解いていってほしい。100年を超える歴史の中で幾度も名前を変えながらも、スウェットという定番アイテムを作り続けてきたという一貫性そのものが、このブランドの信頼の証と言えるだろう。
この記事で調べたものが、いまお店にあるかを見られます。売り切れの場合は出ません。
いまお店に在庫がありません—