古着大百科 > タグの見分け方

Levi's、Leeと並ぶ三大デニムブランドのひとつとして知られるWrangler(ラングラー)。カウボーイやロデオライダーのために開発されたルーツを持つこのブランドは、ヴィンテージ市場でも根強い人気を誇っている。腰の後ろに付くパッチやタグの表記を読み解くことで、そのアイテムがおおよそどの年代に作られたのかを推測できることが知られている。誰でも実践しやすい、実用的な知識のひとつだ。この記事では、Wranglerのタグに現れる年代のサインを、古着初心者の方にもわかりやすいように整理して紹介していく。ロデオという特殊な用途から生まれたブランドだけに、タグの変遷にもその出自が色濃く表れている。実用一辺倒に思えるディテールのひとつひとつに、当時の開発現場の試行錯誤が刻まれているという視点で眺めると、また違った面白さが見えてくるはずだ。
Wranglerは1947年、アメリカのノースカロライナ州グリーンズボロで誕生したブランドである。ワークウェアメーカーの一部門としてスタートし、ロデオ選手たちと密接に協力しながらデザインを固めていったという経緯を持つ。実際に馬にまたがる動きやすさや耐久性を重視して開発された初代モデルは、深めの股上やフラットなリベット、多めのベルトループといった、ロデオ仕様ならではのディテールを備えていた。見た目の格好良さだけでなく、実際の使用シーンを想定した細部の工夫が随所に見られる点も、このブランドの奥深さを物語っている一着ごとの個性でもある。ブランド名の「Wrangler」は牛や馬を扱う人を意味する言葉で、西部開拓時代の精神をそのままブランド名に込めている。設立母体となったワークウェアメーカーは、それ以前から労働者向けの衣料品を手がけており、その実績とノウハウを土台にしてウェスタンライン専門のブランドとして独立した経緯を持つ。単なる思いつきではなく、既存の生産体制と技術力を活かして生まれた新規事業だったという点も、後年の品質面での信頼につながっていったと考えられている。
Wranglerの初代モデルを語るうえで欠かせないのが、デザインを手がけた人物の存在だ。実際にロデオ選手たちと密接に関わりながらデニムの設計を行ったこの人物は、業界内で「ロデオ・ベン」という愛称で親しまれていた。当時すでに名の知れたロデオライダーたちに新しいデザインを実際に着用してもらい、その意見を反映させながら細部を詰めていったという開発姿勢は、机上のデザインではなく現場の声から生まれたジーンズであることを物語っている。この開発姿勢こそが、後年になってもWranglerが実用性の高いブランドとして支持され続ける土台になったと言えるだろう。実際に名の知れたロデオライダーたちが新しいデザインを支持したことも、ブランドの信頼を後押しする大きな要因になったとされている。

Wranglerを象徴する腰のパッチには、ロープをかたどった「W」の文字が描かれている。もっとも古い時代はこの「W」の巻き方が内側に向かうデザインだったが、ごく短期間のうちに外側へ向かう巻き方へと変わっていった。内巻きのパッチはきわめて希少とされており、現存する個体自体が少ない。まずはこの巻き方の違いを見極めることが、年代判別の最初の入り口になる。ロープを模したデザインの中に隠れた小さな違いだが、見比べてみると印象が意外とはっきり変わって見えるポイントだ。
腰のパッチの素材にも時代ごとの変化がある。もっとも古い時代は革製のパッチが使われていたが、その後はプラスチックのような合成素材のパッチへと切り替わっていった。あわせて、パッチにベルの形をしたマークが加わるようになった時期もあり、その後さらに時代が進むとこのマーク自体が姿を消していく。マークの有無は、比較的わかりやすい年代判別の手がかりとして知られている。パッチの素材が変わった理由には、当時の生地の防縮加工によって革が縮んでしまい破損しやすかったという実用面の事情も関係していたとされ、より丈夫な素材への切り替えは機能性を重視した結果でもあった。

腰の内側に縫い付けられている内タグにも注目したい。もっとも古い時代は白地のタグが使われていたが、その後の時代になると黒地のタグへと切り替わっていった。あわせて、タグに登録商標マークが加わるようになったタイミングもあり、この二つの要素を組み合わせて確認することで、より詳しい時期の絞り込みができる。地色の違いは遠目からでもすぐに判断できるため、慣れないうちはまずこの点だけを覚えておくだけでも十分に役立つ。あわせて内タグの手触りにも時代ごとの違いがあり、慣れてくると触れただけで大まかな年代を予想できるようになる。
内タグに記載されるサイズ表記の位置や、生産国を示す表記の有無も重要な手がかりだ。もっとも古い時代はサイズがタグの中央に大きく表記されていたが、その後の時代になるとタグの左側に寄せられ、隣に生産国を示す表記が加わるようになった。この配置の変化を確認することで、内タグの色だけでは絞り込みきれない時期も、さらに具体的に特定できるようになる。サイズ表記の周辺に添えられる装飾的なデザインにも時代ごとの違いが見られ、単なる数字の配置以上に細部まで見比べる価値がある。

内タグの形にも時代ごとの特徴がある。長年にわたって四角い形のタグが使われてきたが、ある時期に三角形のタグへと切り替わった時期が存在する。三角タグの時代にはさらに記載される情報量が増え、生地の品質をアピールする文言が加わることもあった。こうした宣伝文句ひとつからも、当時の時代の空気感が伝わってくる。タグの形状という視覚的にわかりやすい特徴であるため、遠目からでも判別しやすいポイントだ。三角形という珍しい形状は、他ブランドではあまり見られない意匠でもあり、Wranglerの中でも特にコレクター心をくすぐる時代のひとつとして語られることが多い。

| 時期の目安 | タグの通称 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 1940年代末〜1950年 | 内巻きタグ | 革パッチの「W」が内側に巻く、きわめて希少なタイプ |
| 1950年代前半 | 外巻きタグ・プラスチックパッチ | 「W」が外巻きに変化。パッチが合成素材に切り替わる |
| 1950年代〜60年代前半 | 白タグ前期 | 白地の内タグ。サイズ表記が中央に配置される |
| 1960年代 | 白タグ後期 | 登録商標マークが加わる。サイズ表記の位置が左寄りに変化 |
| 1970年代 | 黒タグ | 内タグの地色が黒に変化。生産国表記が加わる |
| 1980年代前半 | 三角タグ前期 | タグの形状が四角から三角に変化。ブランド名が太字に |
| 1980年代中頃 | 三角タグ後期 | 生地の品質をアピールする文言が加わり、情報量が増加 |
| 1985年〜1986年 | フラッグタグ | デニムが旗になったような図柄が描かれた、短期間のみの希少なタグ |

実物を確認する際は、まず腰の革パッチに描かれた「W」の巻き方を確認する。次にパッチの素材とベルマークの有無を見て、続いて内タグの地色を確認する。そのうえでサイズ表記の位置と生産国表記を見て、最後にタグの形状が四角か三角かを確認し、これまでの情報と矛盾がないかを突き合わせるという順序で進めると判断がしやすい。

腰の革パッチが劣化して失われている個体では、トップボタンの裏側に刻まれたブランド名の刻印が、他ブランドとの取り違えを防ぐための手がかりになる。革パッチは防縮加工された生地の縮みに巻き込まれて失われやすい部位でもあるため、パッチが無い個体に出会った際は、まずボタン裏を確認する癖をつけておくとよい。ボタンは生地に比べて経年劣化の影響を受けにくく、刻印がはっきりと残っている場合も多いため、他ブランドとの取り違えを防ぐ最後の砦としても頼りになる部位だ。

オンラインで購入を検討する場合は、腰のパッチの正面写真だけでなく、内タグを接写した写真もあわせて依頼するのがおすすめだ。内タグの文字は細かく、写真の解像度が低いと判読しづらいことが多いため、できるだけ近接して撮影してもらうとよい。実店舗で確認する場合も、内タグをめくって生産国表記まで確認する習慣をつけておくと、判断材料が格段に増える。あわせて、パッチの縫い付け方や糸の色合い、生地全体の色落ちの表情も見ておくと、タグの情報だけに頼らない総合的な判断ができるようになる。特にパッチが後年に付け替えられている個体もまれに存在するため、周辺の縫製に不自然な点がないかも確認しておきたい。

A. 使用された期間がごく短かったとされているためだ。革パッチ自体が経年劣化で失われやすいこともあり、現存する個体は非常に限られている。
A. 白タグのほうが先に使われており、その後の時代に黒タグへと切り替わっている。
A. その場合はトップボタンの裏側に刻まれた刻印を確認するとよい。刻印さえ確認できれば、他ブランドとの取り違えを防ぐことができる。
A. 使用された期間が1年程度とごく短かったとされているためだ。デニムが旗のようにデザインされた独特の図柄も、他の時期のタグには見られない特徴だ。市場に出回る個体自体が少ないため、コレクターの間では見つけただけで話題になるほどの存在として扱われている。
ヴィンテージ市場でWranglerのアイテムに価格差が生まれるのは、単に古いか新しいかという単純な話だけではない。使用期間が短かった希少なタグデザインや、当時の生地の質感、縫製の丁寧さといった要素が組み合わさることで、コレクターの間での評価が変わってくる。カウボーイのために生まれたブランドだからこそ、タグから読み取れる情報は単なる「年式」以上に、その一着がどのような実用の現場で使われていたのかを知る手がかりでもある。実際にロデオの現場で酷使されることを前提に開発された一着だと思うと、経年による色落ちや擦れも単なる劣化ではなく、その道具としての歴史そのものに見えてくるから不思議だ。

Wranglerのタグから年代を読み解くには、革パッチの「W」の巻き方、パッチの素材とマークの有無、内タグの色と登録商標マーク、サイズ表記の位置と生産国表記、タグの形状という複数の要素を組み合わせて確認していくことが欠かせない。ロデオという実用の現場から生まれたブランドだからこそ、タグの変遷そのものにも西部開拓時代の精神が受け継がれている。ひとつずつ着眼点を確認しながら、自分の手元にある一着の背景を紐解いていってほしい。牛や馬を追う人々のために設計されたジーンズが、時代を経て世界中の古着ファンから支持される存在になったという流れを知っておくと、店頭で一着を選ぶ時間もより味わい深いものになるはずだ。
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